大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 昭和53年(ワ)10732号 判決

昭和五三年(ワ)第一〇七三二号事件原告

第六六六七号事件被告(以下略称原告)

高橋末義

右訴訟代理人

山崎清

昭和五三年(ワ)第一〇七三二号事件被告

第六六六七号事件原告(以下略称被告)

塩沢健次

右訴訟代理人

中川恒雄

外二名

主文

一  原告と被告との間において、原告が被告に対し別紙物件目録(一)記載の土地につき賃借権を有することを確認する。

二  別紙物件目録(二)記載の建物を競売に付し、その代金から競売手続費用を控除した金額を分割し、原告及び被告に各二分の一ずつ配当することを命ずる。

三  訴訟費用は、原告に生じた費用を被告の負担とし、被告に生じた費用を原告の負担とする。

事実《省略》

理由

一賃借権確認請求について〈省略〉

二共有物分割請求について

1  共有物分割請求の請求原因1及び2は当事者間に争いがないので、事案にかんがみ、以下、まず抗弁につき検討する。

2 〈証拠〉並びに前記一の1認定の事実によれば、次の事実を認めることができる。

原告と被告とは、本件建物を共同で買い受けた昭和四三年一二月一三日、堀船不動産の助言を受けて、道路拡幅工事の始まるまでの見込み期間を五年とみて、それまでの間本件建物を従前どおりアパートとして他に賃貸し、経費は二分して負担し、収益も二分して受けることとし、五年後に双方が再び話し合う旨の念書を作成した。その後、右の合意に従つて本件建物は数人に賃貸されていたが、五年の経過の近づいた昭和四八年一〇月ころには、原・被告は、すべての賃借人に本件建物を明け渡させた。そこで、原告は、本件建物を取り毀してB地及びD地において自己の店舗等を増改築しようと考え、被告に相談したところ、被告は当面増改築する気がないので原告だけで実行して欲しいとの返事をした。原告が武藤に対し、右の増改築につき承諾を求めたところ、武藤は、D地の地形が悪いので、A地とB地との境界線を東に延長した線の南側の範囲で改築をするならばこれを承諾するが、さもなくば承諾できない等と言つて断つた。そこで、原告は、武藤を相手方として増改築の承諾を求める申立をしたが、その間に、被告が本件宅地全部を武藤から買い受けた。原告及び被告は、本件建物の二階西側部分の壁を一部ぶち抜いて、B地及びA地にある各自所有の建物とこれを繁いで本件建物の二階の一部を使用している。

以上の事実が認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。

右認定の事実によれば、原告と被告とは、五年間につき共有不分割の合意をしたこと及びしかる後に本件建物の利用方法を再検討する旨合意したことは明らかであるが、それ以上に五年後に直ちに本件建物を取り毀して共有関係を解消するとまで共有物分割の時期及び方法につき確たる合意をしたものと認めるには足りない。

よつて、共有物分割につき協議が整つている旨の原告の主張は理由がない。

3  前記各証拠並びに〈証拠〉を総合すれば、本件建物の間取等は別紙建物平面略図のとおりであること、本件建物の一階は三室に区画され、北側の道路に面した玄関から各室に直接出入りでき、構造上も隣室及び二階と独立した居住として区分されているものであること、これに反して、二階は五室に区画されているものの、各室の出入口は、簡易なベニヤ板製の引き戸又は開き戸一つであるにすぎず、炊事場は三室にはあるが二室にはなく、便所は各室ともになく、廊下の端に共用として設けられているだけであり、全体として構造上区分された独立の建物としてその用途に供し得るものではないことが明らかである。

本件建物の構造間取り等の状況が右のとおりであるから、本件建物を価値的に平等に二分し、区分所有の目的とすることは不可能であるというべきである。

よつて、本件建物を競売してその代金を分割することを命ずることとする。

三結論

以上のとおりであり、原告の請求及び被告の請求はそれぞれ理由があるからこれを認容し、訴訟費用の負担につき民訴法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(久保内卓亞)

物件目録(一)、(二)〈省略〉

土地略図、建物平面図〈省略〉

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例